第四十六話 神器を求めて

(改)2019/08/18
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 ミシェルに連れられて次に向かったのは作戦室。扉を開くとルイス王子たちが集まっている。

「お帰り。その様子だとグレアム殿下とは上手くいったみたいだね」
「えぇ。神槍ゲイレルルは無事オニキス様が使用できることになりましたし、次の行動に移りましょう」

 作戦室の奥に座っていたモンタギュー殿に声をかけられるとミシェルは自慢げに答える。
 そういえばメテオライトにグレアム殿下対策を教えたのはミシェルだったか。彼女がオニキスに思いを寄せているとなると事がうまく運んで嬉しいんだろうなぁ。

 アイリス軍とは初対面となるメテオライトの紹介と、アゲートの正体がオニキスだという事を彼らにも簡潔に伝えると現在の状況を確認し合う。

「先程までモンタギュー殿と話し合った結果、僕たち数名でアイリスの神殿まで神剣スクルドの回収に向かうことになったんだ」
「現在、解放軍には五つの神器があるけど邪竜ロキを倒すとなると全ての神器が揃っているほうが良いと思ってね。神雷スルーズは先ほどマーリン殿に回収に向かってもらったんだけど、ミシェルにも一ヶ所お願い出来るかい?」

 ゲーム通りに進んでいる場合、ローレッタ解放の時点で入手出来ている神器は六章外伝で【神炎フリスト】、八章外伝で【神斧ランドグリーズ】、十章外伝で入手可能な【神光アルヴィト】【聖杖ヘルヴォル】の合計四つだ。
 以降は十二章外伝で【神弓シグルドリーヴァ】、十五章外伝で【神剣スクルド】、十六章外伝で【神風シグルーン】、十八章外伝で【神雷スルーズ】、十九章あるいは外伝で【神槍ゲイレルル】の五つの神器が入手できる。
 入手の順序は入れ替わってしまっているが、残る神器は三つとなる。

 神雷はマーリンが住まう迷いの森近くの洞窟に封じられているので、管理者であった古の魔女の後継者である彼の存在があれば封印を解き持ち出すことができる。
 しかし現在の解放軍で入手が難しそうなものといえば、マグノリア王国の熱帯雨林に封じられている神斧だろう。
 原作ではイレーヌ王女たちが仲間になった直後に条件を満たしていれば外伝に行けるが、彼女たちが仲間になる状況が異なっていたのもあり封印の地には向かえていない。

「実はリリエンソール公爵家で管理している神器がもう一つあるんだけど、私では何故か封印の扉が開けられないんだ。古文書を見た感じだと大公スヴェルの奥方が管理していたものだから女性である必要があるかもしれない」
「まぁ、そうでしたの。神弓が封じられていた場所は私も知っておりますが、もう一つはどこにありますのかしら?」
「場所は同じなんだけど、神弓が封じられていた祭壇があるだろう? そこの裏に隠し通路があるから、その先にあるはずだ」

 神弓が封じられていた場所はリリエンソール渓谷からそう遠くはない場所にある遺跡――ワールドマップ上では結構な近場に表示されているが、ゲーム上の地図では詳しい場所までは判別不可能。
 この外伝に進むには十二章の攻略中にミシェルとエリアスが会話している必要があるのだが、この章では原作の俺は敵軍に雇われているのでメレディスによる説得を先にしなくてはならないという面倒なおまけつきだ。

「ふむふむ。お父様では開けられない謎の隠し通路……大冒険の香りがするわね」
「嫁入り前なんだから、あまりお転婆はしないでくれよ?」
「当然ですわ。あまり大人数を連れ歩くわけにも参りませんし、二・三人だけつれて向かわせていただきます」

 今度こそ神器回収の道中で魔物との戦闘があるかもしれない。以前ミシェルには物理攻撃に関しては盾になるといっているので同行を申し出るのは簡単だよな?
 アイリス騎士も多くが残るみたいだし、フェイス様の護衛はメレディスたちで大丈夫だろう。
 もう長いことミシェルとまともに話ができていないのだ。友情にしろ愛情にしろ、俺は彼女のことをもっとよく知るためにも、ここいらで親睦を深めておきたい。

「ミシェル。俺もついていっていいかな?」
「え……? えぇ、構いませんけど」
「物理盾は任せてくれ」
「ああ。そういえば前にそんなこと言ってましたわね」

 うん。やっぱり彼女の中で俺は顔見知りレベルに終わっているらしい。
 彼女のこの反応には傷つくけど、これは彼女のことをちゃんと見ていなかった俺の自業自得なのでいたしかたない。
 ミシェルはルイス王子たちと幾つか言葉を交わすとメテオライトたちをその場に残し、俺を引きずるようにして作戦室を後にした。

 彼女の意外と強い腕力に引かれるがまま廊下を進む。
 白を基調とした城内にはまだ戦いの爪跡が残っており、絵画や壺などが飾ってあったであろう場所は破壊か略奪にあったのか蛻《もぬけ》の殻のままだ。
 作戦室から離れたローレッタ城内の端――かつては美しい花々が植えられた花壇があり、騎士たちが休憩のために使用していたスペースだが、やはりここも戦渦の名残か無残な状態となっていた。

「テオから話は聞いているわ。それであなたに幾つか言っておきたいことがありますの」
「う、うん」

 いったいどこまで聞いているのかは見当が付かないが、メテオライトからという事は少なくとも俺が彼女と同じ転生者だという部分は間違いないはずだ。
 もしかしたら嫌われているのかもとか色々と怖い部分もあるが、それならそれでハッキリと言ってくれたほうがずっといいのかもしれない。
 変に期待を持っている今の状況が少しでも変わるのならと、俺は彼女の言葉を一言一句も聞き漏らさないよう耳を傾けた。
 いつになく真剣でそれでいて冷たい視線――よく考えなくても嬉しい内容ではないという事が見て取れる。

「貴方が好きなのは|氷の貴公子《原作の私》かしら? それとも|目の前にいる私《氷の魔女》? 前者だとしたら生憎だけど私に彼を求めるのはお門違いよ。見ての通り彼とは家柄と名前ぐらいしか一致する部分がないわ。後者の場合は、なんでそんなことになったのか是非とも詳しくお聞かせ願いたいのだけど?」

 口元にのみ微笑みを携えた冷たい表情でミシェルは言い放つ。
 先日泣いた原因でもある事柄を見事に言い当てられ、俺は頭の中が真っ白になり、上手く言葉を返せずにいた。

「|氷の貴公子《彼》はとても人気があったもの、貴方が混乱するのは無理もないわ。悪竜を倒した前後くらいに記憶が戻ったのなら尚更でしょう。もう少し前世の記憶と感情を切り離してよく考えることね」

 そう冷たく言い放つとミシェルは準備があるからと足早に去って行ってしまった。
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