第二十七話 アイリスの王子

(改)2019/08/16
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 レギンレイヴシリーズの第一作目である【月虹のレギンレイヴ】の主人公――ルイス王子は歴代主人公たちの中でも群を抜いて人気が高い。
 イケメン過ぎず、かといって不細工というわけでもない平均的な容貌。正義感が強く、弱いものを見捨てることができない甘さもあるが、年齢的にも多少青臭いところがあるのは仕方がないだろう。確かエンディングの時点でやっと成人するはずだから、現在は十五歳くらいか。
 なお、シリーズのファンを長くやっているものたちからは『初代さま』と呼ばれている。俺も前世では初代さま呼びだったうちの一人だ。

「グレアム殿下、アントン殿下、フェイス殿下。よくぞご無事でいてくださいました」

 ルイス王子は礼儀正しく王族の三人へと挨拶をする。流れるように跪くあたりは王子というより騎士の部分が強いな。
 アイリスは騎士の国と呼ばれるだけあってか、主君への礼は欠かせないのだろう。原作でも時折話題に上がったアイリス国王の教育方針で、ルイス王子は王族としての立ち振る舞いと聖王家に仕える騎士としての矜持をその身に宿している。
 ああしかし、ほんと初代さまマジ初代さま。確かエンディングだと後世の人はルイス王子のことを騎士王と称するんだったか。

「ルイスよ。元気そうで何よりだ。トラヴィスは息災か?」
「はい。最初は父が自ら前線に立つと言い出すほどでございました」
「はははっ、相変わらず勇ましいな」

 そんな感じで王子たちが少し話をしたのちに、俺たちも含めて要塞の中に案内された。
 俺たち一行はそこそこの人数が居たので半数以上は待機場所に通され、残りは奥の会議室に案内される。
 コナハト要塞の会議室に集まったのはルイス王子たちアイリス軍の将たちと、グレアム王子たちの護衛についてきた数人の騎士たちだ。

「ルイスよ。私たちはこれよりアイリス軍と共にハイドランジアをはじめとする、帝国に与したものたちと戦うつもりである」
「グレアム殿下自らが戦場に立たれるのですか?」
「いや。私には剣の心得があっても実戦で振るった経験がない。戦場での指揮もそうだ。なのでルイスよ。そなたには解放軍の盟主代行を頼みたい」
「私が指揮を執り殿下たちを聖王国に帰すという事ですね。……わかりました。最善を尽くします」

 ここでバーナードたちに軽く目配せするだけで決断をするとか、さすがは原作の主人公だな。俺がルイス王子の立場だったら不満が出そうなもんだ。
 正直いって聖王国の治世は余り宜しくない。あの聖王や貴族たちを見ていれば分かることだが、内部で腐敗が進んでいるのだ。
 まあ、グレアム王子は少し世間知らずなだけみたいだから、このさき色々なものを見て回れば良い王になるかもしれない。
 アントン王子はともかく、フェイス王女が慕っている様子もあることだし悪い人ではなさそうだ。
 あとは慎重すぎる部分を直せればいい気がするけど、これは本人が言っていたように経験不足なだけだろうから、この旅が終わる頃が楽しみだ。

「それと、アントンとフェイスをアイリス城に預けたたい」
「ブリジットたちから連絡を受けた際に迎えの馬車を本国に手配してあります。今日はもう遅いので到着は明日の昼過ぎになるかと思いますので、今夜はご不便もあるでしょうがこの要塞にお泊り下さい」

 あ~、ほんと初代さまブレないな。なんでそんなに捻くれたとこがないんだ。温和な性格が原因か。

「あの、そのことなのですが……兄さま、私も共に参ります」
「フェイス!? 何を言っているのだ! 私たちはこれより戦場へと向かうのだぞ!?」
「そっ、そうだよ! なんでわざわざそんな怖いところへ行かないといけないんだ!」

 俺たちはさっき森の前で聞いていたが、兄王子たちには寝耳に水な話だったようで二人そろってあからさまに狼狽えている。

「フェイス様、差し支えなければ理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「邪竜ロキが復活したという噂は、この地にも届いていることでしょう。父が亡くなられた今、邪竜に対抗できる神器・神光アルヴィトを扱えるものは私しか残っておりません」
「たっ、確かにそうだが……っ!」
「これでも私には神聖魔法の心得がございます。護衛としてついて来てくれたメレディスたちに助けられながらになるかもしれません。それでも、私は逃げるわけにはいかないのです!」

 先ほどのことといい、今のこれといい、フェイス様が覚醒した!
 ミシェルには怒られるかもしれないけど、俺はフェイス様を応援するぞ! 戦うヒロインは美しいのだ!
 兄である王子たちとしては聖王家に伝わる神器が扱えないというのはコンプレックスになりそうではあるが、こればかりは魔法に適性がないと無理な話だ。
 魔力1とか3のやつが使ったところで大した威力は期待できないし、そもそも使用できる武器もその熟練度も兵種に依存する。
 アントン王子は判らないがグレアム王子はどう見ても剣士系だ。たぶんルイス王子と同じ兵種の王子《プリンス》だろう。

「……護衛の方たちは、どのようにお考えですか?」

 ここで俺たちに話題を振ってくるとは……さすがのルイス王子でも主君たる聖王家の人間は止めにくいという事か。でもルイス王子よ、話題を振る人選を間違えてますよ。

「私はフェイス様の向かう場所についていき、その御身をお護りするだけです」

 メレディスさんよ、ずいぶん男前だな。イケメン、抱いて! ってこういう場面で使えばいいのだろうか?

「俺もメレディスと同じく。結構丈夫なので盾くらいにならなれますよ」

 ロビンお前の守備高かったのか……それともHPか。訓練用の剣だと威力が低いから分からなかったぞ。いや、そういえばさっきもあんまりダメージ受けてなかった気が……。
 と、ここで二人の視線が俺に向く。俺も意気込みを話せばいいのか? よし、いっちょ頑張ろう。

「この聖剣テミスに誓って、フェイス様をお護りする」

 グレアム王子が盛大に溜息を吐いた。そりゃ三人が揃いもそろって参戦許可するなんて思いもしないだろうからな!
 俺だってさっきの話が無ければ、もう少し悩んだところだ。

「……ルイス。こいつは普段は大人しいが、一度言い出すと聞かない」
「そのようです。エリアス殿以外の護衛二人は魔導騎士《マギナイト》のようですし、フェイス様にはなるべく安全な場所に布陣していただこうかと思います」
「あぁ、世話をかける」
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