メレディス01.赤き令嬢、貧乏貴族に惹かれる

 王都防衛の折に敵に敗れ処刑された父の遺体は、王都にほど近いロザリー領の一族が眠る墓地へと埋葬されていた。
 本来であればもっと辱められていたであろう父レックスの遺体は首と胴体こそ離れていたが、武器の試し切りに使われることもなければ不必要に傷つけられることなく無事に王都を脱出できた母が引き取ることが出来たそうだ。

「お帰り、メリー。無事で何よりだ」
「お兄さま……」
「どうしたどうした? そんなにしおらしくして……いつもの気の強いお前は何処に行ったんだ?」

 城内で兄のサミュエルに声を掛けられた。今まではロザリー公爵領の領主代行に立っていたが、グレアム殿下の側近候補に名を連ねていただけあって王都に召喚されていたようだ。

「そうだ。前に父上が話していたエリアス殿も一緒に戻ってきているのだろう? 父上ほどでは無いが、俺が代わりに手合わせを願いたいのだが」
「しなくていいです……」
「うん? なんでだ? 父上が認めた男であれば――」
「他にも用があるので失礼します」

 私は子供のころから騎士になることに憧れていた。そしてその夢が叶って間もなく、彼が現れたのだ。
 少し不思議な色合いの翠色の瞳は、今までに私が見た事の無い意志を宿していた。
 当時まだ聖騎士団の力を過信していた私は、彼に失礼な態度をとった。気が強くて男勝りな、可愛げのない女だと思われたことだろう。

 でもなぜか私に優しくしてくれる彼が気になって、慣れない手料理などを振る舞って気を引いてみようとした。でも、やっぱり駄目だった。そして彼の思い人が彼女なのは、その後すぐに分かった。
 ミシェルとは子供のころから何度も一緒に遊んでいた。私に聖騎士《パラディン》ではなく、魔導騎士《マギナイト》を目指すよう助言をくれたのも彼女だ。ミシェルは化粧の仕方や、ドレスの着こなしなどの相談にも乗ってくれる私にとって姉のような存在でもある。

 しかし今は彼らのことを考えている場合ではない。私には直接話をしなければならない相手がいる。
 城内を歩き周り目的の人物――オニキス将軍を探す。暫く歩き回ったところで、食堂の手前にその人物を発見した。

「オニキス将軍、少々よろしいでしょうか?」

 少し人が多いけど、ちょっとした挨拶をするだけだ。以前の私であれば彼の素性を知った今、切りかかっていても可笑しくは無かっただろう。

「両親の件で貴方にお話したいことがあります」

 私の様子を察してか、ミシェルがエリアスを連れて去っていく。あの様子だと、いつもの【フェイス様の聡明さと可憐さを語らう会】が開催されているのだろう。あれは始まると結構長いので、エリアスには少々同情する。

 少し寂しくなった庭園までオニキス将軍を連れ出した。用件は父が必要以上に辱められずに済んだ礼と、王都に来ていた母の脱出の手引きに対する礼だ。父は立場上仕方がなかったが、母のように剛毅な女性を大人しくさせるのは大変だっただろう。
 その他にも様々なことを話していると、近くの植え込みが僅かに揺れる。先ほどからなにやら視線を感じていたが、盗み聞きとは随分と行儀の悪いことをしている。叱責するべき行為なのでそちらへ声を掛けようとしたところで、派手なクシャミが辺りに響き渡る。
 そのすぐあと、植え込みからロビンが出てきた。なんでこんなことをしているのかは知らないけれど、オニキス将軍に別れを告げるとロビンの首根っこを掴み騎士団の詰め所へと向かった。

「だってオニキス将軍って強いし、背も高くて格好いいし……メレディスが――」
「私が何よ」

 なぜ盗み聞きなどしていたのか問い詰める。しかしロビンの態度は、いまいち要領を得ない。
 ずっと私の手を握ったままもじもじとして、子供のころ初めて会った時を思い出す。
 当時、剣を習い始めたばかりの私は手合わせの相手が欲しがり、お父様に我儘を言って相手を集めて貰った。そのうちの一人がロビンだった。今思えば他の男の子たちは接待じみた手合わせだったが、どう見てもロビンだけは手加減なしで私より弱かったのだ。

「メレディスが取られちゃうんじゃないかって」
「はあ?」
「俺じゃあ頼りないかもしれないけど、騎士団長やサミュエル殿に認めてもらえるよう頑張るから」

 両手で強く手を握られる。剣を振るう男の人の大きな手だ。眉尻を下げ今にも泣きだしそうなロビンは、まるで捨てられた子犬のようでもある。

「だから俺を選んで。お願い!」

 ロビンは私よりも年上なのに臆病で頼りない。でも人懐こく、素朴で優しい。私は女だからといって護ってもらうというより、騎士として隣に立ちたい。子供のころから付き合いのあるロビンは私のお転婆にも理解がある。

「まったく、もう……お兄様に勝てるの?」
「一生懸命がんばる」

 考えてみればロビンは昔から私について歩いて来てくれることが多かった。聖王国でも女性が騎士団に入るというのは珍しい。貴族の娘であればなおさらだ。その点においては、私もミシェルも変わり者なのかもしれない。
 大切な幼馴染であり、主君でもあるフェイス様を護るためと騎士を目指し始めた時は反対の声のほうが多かった。何をわざわざ傷を負いに行くのかと。良家の娘であれば貴婦人として恥ずかしくない教養と立ち振る舞いを身に着け、そうそうに何処かへ嫁ぐべきだと散々言われたくらいだ。

 そもそも私には憧れている女性の武人がいる。母のビクトリアだ。もともとは普通の貴婦人だった母は、お父様に一目惚れをしたのを切っ掛けに武の道を志した。武家の妻であれば武芸を身に着けていて当然だと思ったからだそうだ。しかし貴族の女性とは思えないほど、傷や痣が絶えない娘など嫁のもらい手が無い。だけどこれは他に嫁ぐつもりは一切ないという意思表示でもあったそうだ。
 母はお父様に手合わせを申し込み、挙句の果てには「私がレックス様をお守りしますので、どうか妻にしてください。宝石やドレスなどは必要ありません。私にはこの槍があれば十分です」とプロポーズしたという伝説がある。

「やっぱり私がロビンを護ればいいのかしら?」
「ビクトリア様の真似はしなくていいよ! 俺がメレディスを護るから、一人で危ないことはしないで!」

 私の小さな呟きを聞き漏らすことなく必死の形相で止めてくる。しかし全くダメとは言わず、一緒になら危ないことをしていいだなんて本当に彼は私に理解がある。
 女を捨てるつもりはないし、かといって言われた通り大人しく過ごすのは性に合わない。そう考えればロビンは私にとって最高の相棒《パートナー》だろう。

「私がロビンを護って、ロビンが私を護れば全て解決ね」
「う、うん。メレディスに頼りにしてもらえるよう頑張る」

 まだお互いの家の了承を得ていないので婚約など出来るかすら判らない。
 でも下手な政略結婚よりは、気兼ねなく接することができる相手のほうが何倍も良い。

 そうだ。ロビンとのこと、エリアスにも伝えないと。私の今までの態度は彼を困惑させてしまっただろうから。それに彼がミシェルのことが好きなのであれば、伝えておきたいこともある。ミシェルは冷たい見た目に反して、気さくで優しい子だという事を。
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メテオライト03.与えられた役割

 霊峰ガリアから戻り早数日、帰ってきた瞬間に開始された仮縫いを経て作られた衣装が届けられた。
 さっそく着替えたはいいが正直いって、こういったデザインの服は何年も着ていなかったので襟元が窮屈で仕方が無い。

「取り急ぎ仕立てさせたものなので、ご満足頂けるかとうか……」
「十分でしょ。むしろこの短期間で、よくもまあ……こんなに手の込んだ刺繍ができたね。どこのご婦人の作品だい?」

 上着の見返し部分に施されたタイムの小枝とミツバチの刺繍は恐ろしく見事なものだ。羽織ってしまえば見えなくなってしまう部分に注ぎ込むには勿体ないほどである。
 刺繍が趣味の御夫人で思い当たるのは叔母上あたりだろうか。それともミスルトー侯爵家のメイドか。彼の家格であれば、それなりに良家の子女を行儀見習いとして預かっているかもしれない。

 シスル王国の騎士たちが身に着ける衣類には『勇気』を意味するタイムをあしらうのが慣例なのだが、これを施すのは女性というのが一般的だ。この刺繍は仕立て屋の仕事とは別である。専業の者はおらず、家事や仕事の合間に縫ってもらうのが常だ。なので一週間ほどしか時間が無かったのに、この出来上がりは驚嘆すべきである。

「我が全力を尽くしました」
「えっ……もしかしてこの刺繍、オブシディアンがしたの?」

 この国では雪深い冬を屋内で静かに過ごす。なので老若男女問わず、室内でできる趣味を一つ二つ持っているのが当たり前だ。僕もそれで楽器の演奏や歌唱を身に着けた。なのでオブシディアンの趣味が刺繍というのは特に違和感がない。無いのだが――

「お嫌でしたか……?」

 なんで僕のなんとも言えなくて困っている反応に、傷ついたような顔をするのかな? その猟犬みたいに怖い顔で残念そうにされても、こちらとしては反応に困るんだけど。

 まあ、それはさておき――役者も衣装も整った。あとは舞台へ上がるだけである。
 国境近くの砦に案内されると、駐屯していた騎士たちに出迎えられる。軽く挨拶を済ませたあとは予定通りに兵を分け、移動が開始された。

 前線で戦う兵たちは交代で休暇を取り、故郷や城に戻ってくることがある。なのでそういう設定の騎士たちに混ざりながら門をくぐる。シスル王国軍は人の入れ替わりが激しいので、隊長クラスの人間が居れば案外簡単に入り込めるのだ。
 城内へ悠然と足を踏み入れた僕の両脇にはジェイドとヘリオドールの二人、そして布に包まれた神槍ゲイレルルが控えている。オブシディアンには近隣諸侯の動きを見張ってもらっていて、僕と一緒に行動するといらない噂が立ちそうなミシェルにもそちらの手伝いを頼んである。
 僕たちが目的の場所へと真っすぐに進んでいくと、状況がまるで理解できていない使用人たちは道を開け、城内の警備をしている|一部の騎士たち《マラカイト将軍派》はどうするべきか脳が処理しきれていないのだろう。あっけないほど簡単に父上が居ると思われる謁見の間に辿り着く。

 謁見の間の扉の前には、騎士が左右に一人ずつ立っている。しかしよく見知ったジェイドとヘリオドールが居るおかげか、さして警戒した様子は見られない。だが二人の間から姿を見せた僕の顔を見るなり、慌てて礼を取る。どうやら彼らは僕が誰なのかを理解できているようだ。様子からしてオニキス派の騎士かもしれない。

「帰還のご挨拶がしたいのだけど、父上はこちらであっているかい?」

 僕の問いかけに頷くと騎士たちは扉を開いてくれた。そのまま真っすぐと進むと、謁見の間に集まっていた文官たちがどよめき始める。
 集まっている文官たちの中には見覚えのある者たちも数人居た。そのうちの一人こそが、母上の実家であるラナンキュラス侯爵家の当主クォーツだ。僕にとっては伯父にあたる人物である。

「父上。どうもお久しぶりです。貴方とヘレンたちに追い出されたメテオライトですが、覚えておいででしょうか?」
「い……いい、今さら何の用だ!?」

 僕は後ろに控えているジェイドに持たせていた神槍ゲイレルルを手に取り、父上の眼前に突き付ける。凄く重いけど、ここは気合で頑張らないと格好がつかない。でもこうなった原因でもあるオニキスには、合流したら少し遊ばせてもらおう。

「父上の判断は目に余るので引退していただこうかと思いまして、こうしてご挨拶に伺いました」

 国を追われたことを理由に責任から逃げ続けたのは僕だ。しかし追い出した本人が余りにも無責任すぎる。国王としても、父親としてもだ。僕は口元にだけ笑みを携え、周囲を睥睨する。

「シスル王国の国王は王であると同時に、古くより聖王家に仕える騎士の一族です。もちろんローレッタ聖王国の爵位――シスル辺境伯の地位を持つことは、幼少期に家庭教師から習いましたよね? 特に我が国は唯一、リンデン帝国に隣接している防衛の要所。辺境伯という立場としては、近隣との利害関係で手のひら返しがあっても可笑しくは無いのかも知れません。ですが聖王国の騎士としての誇りを捨てるとは、随分と落ちぶれたものですね」

 とうの昔に戦死した兄たちに比べれば武闘派とはいいがたいが、現在生存しているシスル王家の人間では僕は十分に武闘派なのだろう。伯父上《ラナンキュラス侯》やその他の知った顔たちの僕を見る目は晴れやかだ。聖王国の守護者たりえる強い王を欲している彼らには、この程度のパフォーマンスで十分なのかもしれない。

「ヘリオドール! ジェイド! 貴様らこんなことをして、ただで済むと思うなよ!」
「おのれ……、オニキスの仕業か!?」

 伯父上《ラナンキュラス侯》たちとは別の一団――マラカイト将軍とその仲間たちが口々に罵声をあげ、中には剣を抜く者もいた。一直線に僕へ向かってくるも直前でジェイドに阻まれ、ヘリオドールの魔法の餌食になる。

「俺は生まれたときからメテオライトさまの友人で、騎士になるって決まってましたからね。昔お助けできなかった分、味方をするのは当然ですよ。なあ、ジェイド?」
「私もシスル王国の騎士の家に生まれたからには、その役割を果たしたいのです」

 大きな声が聞こえたからか謁見の間の扉が開き、兵たちが雪崩れ込んでくる。彼らは鮮やかな手際でマラカイト将軍派の文官や、将軍たちを取り押さえた。中には恨みのこもった眼で彼らを見つめている騎士もいる。

「流石に命までは取りませんよ。余生は離宮で静かに過ごしてくだされば結構ですので」

 これでシスル王国はこれ以上、リンデン帝国へ与することは無くなった。しかし再び攻撃を受けるようになるのも時間の問題である。
 帝国との国境である北部の前線は、対応になれた叔父上《オブシディアン》に指揮を任せることとなった。僕は一度、シスル王国の王子としてローレッタ聖王国へと向かわなければならない。

「まったく……オニキスったら僕を働かせすぎだと思わない?」

 馬車に揺られながら一人ぼやく。本来のシナリオではメテオライトにこのような役割は無い。しかし、いつの間にか増えていた僕の仕事はローレッタ聖王国の王都まで行かなければ果たせない。
 上着のポケットから取り出した巾着袋――これまた見事な刺繍が施されている。この中身をグレアム王子に渡すのが訪問目的の一つだ。今の僕にとっては胃痛の原因でもある。

 でもまあ……彼らを見ていると飽きないし、気になることも残っている。この世界は黒谷累《くろやるい》の手を離れた。何が起こるかわからない。でも僕はそれが楽しみでならないのだ。
 転生するときに一度だけ話をした『神さま』に楽しんでもらえるかは置いておくとしても、与えられた役割は果たそう。

 僕はそのまま瞳を閉じ、到着するまで疲れた脳を休ませるために一眠りすることにした。
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メテオライト02.霊峰ガリアにて

 霊峰ガリアはシスル王国の北西に位置する神聖な地だ。原作ゲームでは巨大な雪玉が自軍ターン終了時にごろごろ転がってくるふざけたマップだが、シスル王国では神聖な場所なので一般人の立ち入りは禁止されている。
 僕たち三人は周囲の魔物を警戒しながら、大陸最高峰であるこの山を登り始めた。

「ところでメテオライト様。槍の扱いは経験あります?」
「えっ? ないけど」

 進み始めて暫くたち魔物との交戦の後、休憩中にヘリオドールがそんな質問を飛ばしてきた。魔道士系である僕が槍を使う必要などないのだが、いったいどういう事だろう?
 彼は他の騎士に比べると、テンションが緩めで付き合いやすい相手だ。僕は普段から死の砂漠を歩き回って鍛えているので、霊峰ガリアを登りきる体力もあるし足腰にも自信がある。なので唐突に筋トレを進めてくるなんて事は無いはず。ただでさえ僕の力のステータスは、成長率が15パーセントしかないのだから無理ゲーでしかない。

「せっかく神槍ゲイレルルを取りに来たんですし、陛下を隠居させるんでしたら脅しにちょうどいいじゃないっすか」
「いやいや。さすがにそれはマズいだろう! メテオライト様、やりませんよね? ね?」
「あ~、その手があったね。やっぱりオニキスを連れてくればよかったな」

 小心者の父であれば軽い威嚇どころか、僕が騎士たちを引き連れて迫るだけで腰を抜かしそうだ。
 最初の予定では中級風魔法《トルネード》の一発でも浴びせてやろうかと思っていたが、流血沙汰ともなると民たちへ与える印象があまりにも悪い。
 だがオニキス派の騎士たちとその実家に加え、僕の亡き母上の実家であるラナンキュラス侯爵家を味方につけられていることは実に有利だ。これを利用しない手はない。特にその中でも、この国の貴族の中では古い歴史を持つミスルトー侯爵家も併せれば強力な後ろ盾となってくれるはずだ。

「槍の使い方なら教えますよ。……ジェイドが」
「お前も槍は扱えるだろう!」
「魔導騎士《マギナイト》に昇格してからは持たなくなったし、ジェイドのほうが従騎士時代から成績良かったじゃないか」

 ゲームではシステム上、装備できない武器であっても持ち物欄には入れられた。武器も複数持ち歩けば普通に体格を上回るので、積載量を超えるとかそういったシステムもない。
 そもそも武器熟練度と体格は『戦闘中』に武器を振るうのに必要なステータスだ。なので持ち上げるだけなら必要ない。

「実際に戦闘で振り回すのは無理だけど、持ち上げるくらいならギリギリできるかな」

 それに神槍ゲイレルルの武器重量は僕の体格より上だが、全く持ち上げられない範囲じゃない。運搬をジェイドに任せれば短時間限定で持ち上げられるだろう。運搬まで自分でやったら翌日以降、しばらく腕が筋肉痛になりそうだ。

 その後も休憩を挟みつつ少しづつ上り続け、五日半の時間をかけて霊峰ガリアの頂に辿り着いた。そこには石造りの祠がある。神話の時代に初代国王カーネリアンが建てさせたものだ。この祠の入り口は彼の血を引く者にしか開くことができないよう、魔法によるプロテクトが掛けられている。なので僕は手をかざすと、重厚な音を立てて封印の祠が開かれた。
 僕は祠の中にある祭壇から神槍ゲイレルルを取り出すと、そのままジェイドに渡す。駄目だ、結構重い。こんなの振り回すとか、相当ムキムキじゃないと無理だろう。ゲーム画面では片手で槍を振り回すドット絵を採用していたけど、ここまで重いと無茶だったんじゃないかとさえ思えてしまう。

「さ~て、それじゃあ帰りは一気に戻ろうか」
「メテオライト様、下山のほうが危険です。それに今日はそろそろ日も暮れますし、野営の準備をいたしましょう」
「ああ、言い忘れてたっけ。二人とも、この腕輪を付けてくれるかい?」

 僕は道具袋から腕輪を取り出すと、ヘリオドール達に一つずつ渡す。シスルに帰ってくる直前までマーリン様に手伝ってもらい、作っていた魔装具だ。

「何すかこの腕輪? 魔装具みたいですけど」
「リワープの腕輪の試作品さ。僧侶《プリースト》や賢者《セージ》でなくてもリワープが使えるんだ。とはいえ、まだ試作品だから使用回数は一回でね。まあ簡単に言えば、魔晶石に座標登録した場所に帰ってこられる代物だよ」

 魔晶石の準備に少し時間がかかってしまったのだが、これ自体は魔術の媒介――水晶さえあれば時間はかかるが作ることができる。術の源として僕の魔力を魔晶石に込めてあるが、兵種《クラス》・吟遊詩人《バード》は魔力のステータス上限が、賢者《セージ》など他の魔道士系よりも低い。なので彼らが使うワープ・リワープに比べると移動範囲は狭まってしまう。だがこの霊峰ガリアの頂から麓まで下りるには問題ない。
 そもそも『リワープの腕輪』は【レギンレイヴシリーズ】のかなり後続作品で登場したアイテムだ。遠い異大陸に存在するアイテムなので無理ということは無かったが、再現するのに時間がかかった。だが、その結果は満足いく仕上がりだ。

 二人に使い方を説明し、順に使用すると問題なく術式が発動した。現在地は霊峰ガリアの麓だ。

「はあ~。古の魔女様に弟子入りしていたとは聞いてましたけど、こんな凄いもん作っちまうなんてメテオライト様って天才か何かですか?」
「ううん、草案だけ伝えて術式の構築はマーリン様に頼んじゃった。僕は魔晶石の試作で手一杯だし、賢者《セージ》に昇格する必須条件である杖の才は持ち合わせていないからね」
「流石メテオライト様、ちゃっかりしてますね」

 麓には一般人が立ち入らないように見張り小屋がある。そこで一晩を明かしたのちに、繋いでおいた馬でミスルトー家の邸へと戻ることとなった。ああ、柔らかいベッドと暖かい暖炉が恋しい。
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メテオライト01.故郷の地シスル

 実に不本意ではあるが、僕は今こうして故郷であるシスル王国の地を踏んでいる。十年以上は帰ってきていなかったので、知り合いなど片手で足りる程度存在すればいいかもしれない。
 ひとまずはローレッタとの国境沿いの砦に駐屯していると思われる知り合い――母方の親戚に会いに行くつもりだ。
 ミシェル経由でオニキスからの手紙を貰った時は一体何事かと思ったものだが、彼はエリアスと違い父上や弟の助命は特に考えておらず僕に都合のいい舞台を準備してくれていた。

「お~い! お~い!」

 マーリン様に国境近くまでワープで送ってもらいはしたが、以降は徒歩だと想定していた。なので、ここで声をかけてくれる存在は貴重だ。遠目だが見た感じ正規軍の騎士のようだし、旅の吟遊詩人を名乗れば近くの街くらいまでは案内してくれるだろう。
 御誂え向きにシスル王国民が大好きな『翠緑の勇者の英雄譚』を誰よりも詳しく語ることができる。

「あっ、やっぱりメテオライト様だ! 俺です俺、ヘリオドールです」
「お懐かしゅうございます。子供のころ遊び相手をつとめていたジェイドです」

 ある程度まで騎士たちが近づいてきたところで、僕の持つ『軍師の眼』が懐かしい友人たちの名を映し出した。彼ら二人は僕が国を追われる前までは、共に過ごすことが多かった友人たちだ。

「オブシディアン様が言っていた通りだったなジェイド」
「こうしてまたメテオライト様にお会いできて……このジェイド、感涙の極みです」
「オニキス将軍が手紙を出してからの期間とか情勢とか色々考えたら、今日か明日辺りにこの辺りにいらっしゃるんじゃないかって言ってたんですよ。いや~、流石はオブシディアン様。名推理っすね」

 なるほど。二人が僕を迎えに来た理由は分かった。しかし外見に関しては、そこまで情報がいっていたのだろうか?
 少し前にハイドランジア王国でオニキスに会ったが、あの時とは僕の服装も違う。

「それはそうと、十年以上会っていなかったのによく僕だと判ったね」

 シスル王国を歩き回るには、いつもの吟遊詩人《バード》の衣装では寒い。なので少し前まで修行用に使っていた魔導士《メイジ》の装束に、いつものストールとターバンを重ねたものをマント代わりにあわせてきた。オニキスから服装の説明を受けていたとしたら、なぜ僕の姿を遠目で見ただけで判別できたのだろう。

「ああ、メテオライト様ちっこいですから」
「ヘリオドール、それは失礼すぎるだろう!」

 ヘリオドールの無礼な一言を叱りつけながらジェイドが頭を下げさせている。慣れているのかその手並みは鮮やかなものだ。
 シスル王国で成人男性の平均身長は180cmほどである。しかし僕の身長はそれには遠く及ばない165cmほどしかない。身体が小さいとは昔からよく言われいたが、子供のころはさほど身長差を感じなかったこの二人との身長差は現在、頭一個分近くに及んでいる。なので正直、何というか、そう――

「頭が高い!」

 じゃれ合っている幼馴染たちを見ていたら、なんだか昔が懐かしくなった。僕は冗談めかしながらヘリオドールの頭を軽く叩く。ヘリオドールも子供のころと同じように笑い、それに釣られたジェイドも思わずといった様子で笑みをこぼす。

「近くにリリエンソール渓谷から撤収してきた部隊が駐屯してるので、そちらまでご案内いたします」

 ジェイドの馬に乗せてもらい進んでいくと、砦に辿り着くよりも先にミスルトー侯爵家の者が使いとして現れた。そのまま騎士団の駐屯場所ではなく、近くの街にあるミスルトー家の邸に案内される。

 辿り着くなり叔父上《オブシディアン》に捕まると服を仕立てるための採寸や、すき放題に伸ばしっぱなしで傷んだ髪を手入れされたりした。最低限、王子らしい身なりに整えるまでは砦《あちら》に顔を出せないのだろう。今も仕立て屋とデザイン面で揉めているのか、ただでさえ怖い叔父上の顔が更に恐ろしいものに見える。この先、彼が部下になるのは恐怖でしかない。顔的な意味でだが、本当に怖い。思わず背筋が伸びるし、敬語も飛び出してくるほどだ。
 しかし叔父上は礼儀作法や上下関係に厳しい男だ。いくらオニキスに担がれて仕方なくとはいえ、表舞台に出てきたからには上司として振る舞わないと後で叱責される。子供のころは敬語で話しかけていたが、こればかりは今後も続くだろうから慣れるしかない。

「ああ、そうだ。オニキスが神槍ゲイレルルを欲しがっていたから回収しに行きたいんだけど、この二人を借りて行っても大丈夫かな?」
「承知いたしました。急ぎ準備をさせます」
「それと……周辺諸侯で邪魔してきそうなところの処理は任せたよ」
「御意のままに」

 現状で邪魔になるのは、父上の後妻であるヘレンの息がかかったマラカイト将軍派の者たちだ。
 対するオニキスは僕が国を離れた以降に騎士となったのだが、その活躍は原作通り目覚ましく、かつてない速さで騎士団での地位を強めていった。僕が帰還した際に動きやすくなるようにと、母上の実家であるラナンキュラス家や、その周辺の騎士たちを上手いこと自分の派閥に引き込んで来たらしい。

「さてと、ヘリオドールとジェイドは僕と登山しようか」

 目指すは霊峰ガリアの頂にある封印の祠だ。ここに神槍ゲイレルルが封じられている。
 平地だと今はまだ雪が降り積もっていないが、さすがに山頂付近となれば雪があるはず。登りだけでも最低で五日はかかるだろうが、帰り道はマーリン様に手伝ってもらって良いものを準備してあるので楽ができる。

 準備が整うと霊峰ガリアに近い麓の村までワープの杖で送ってもらう。流石に平地とは気温差があるようだ。吐き出す息は白い。防寒着を身に着け必要な荷物を背負うと、山頂を目指して歩き始めた。
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オニキス03.謎の騎士アゲート

 魔法系の神器の使用者候補として目をつけていたミシェルが仲間になり、それなりの日数が経過した。
 リリエンソール渓谷ではミシェルを人質に取ることで、モンタギュー殿も生け捕りにすることが出来た。幾ら親子とはいえリリエンソール家の人間がそんな手に乗ってくれるか心配であったが、ミシェル曰く『お父様は娘が可愛くて仕方がありませんの』だそうだ。
 彼女たち父子にはその後しばらくの間は窮屈な思いをして貰うこととなったが、色々と根回しをしてくれたオブシディアンのお陰で現在は私の部下ということになっている。

 私という人間の原作ゲーム通りの目的の一つは、聖王国の腐敗の断絶だ。そして今回の戦で聖王国腐敗の一因である聖王や、役人たちを処刑に持ち込むことが出来たのは問題なかった。
 しかし聖騎士団の長まで殺すことになったのは惜しいことをした。一度だけ刃を交えたがその実力は他の騎士たちとは比べ物にならず、聖王国で燻ぶらせておくには勿体ない逸材だった。だが完全に心を折ってしまった手前、再起不能な騎士をふたたび戦場へ引きずり出すのは不可能といえる。

「あのお方とはその後、如何ですかな?」
「今のところは先方からの返事を待っているばかりです」

 ミシェルを捕らえたと聞きつけた派閥の仲間には、もちろん理由を問われた。その際にメテオライト王子の行方の手がかりをつかんだ旨を伝えると、こういったやり取りが増えた。派閥の人間は騎士以外にも司祭や貴族にもいるので、情報を出す相手はさらに厳選している。
 それにしてもミシェルが長年探し続けていたメテオライト王子との連絡役になってくれるのは嬉しい誤算だった。だがメテオライト王子は表舞台に立つには、まだ準備不足であることを理由に私たちには会って下さらない。彼女を疑っているわけではないが、いい加減ご本人と直接お話がしたいものだ。

 メテオライト王子が国外追放されて今年で十六年になる。あの事件はメテオライト王子を次期国王に据えようとする派閥と、今や帝国に人質として出されているティモシー王子の派閥の政争が原因だった。
 私が前世の記憶を取り戻したのは、メテオライト王子がシスル王国から出て行った僅か数か月後だ。

 当時まだ十一歳になったばかりの私に出来ることなど些細なことしかない。
 まず最初はひたすら鍛錬に励み、肉体を鍛え上げた。次に『竜族を倒せるくらい強くなる』と公言し、軍略なども頭に叩き込んだ。
 人間関係も従騎士として私を預かってくれた先輩騎士に『有望な見習いが居る』と触れまわってもらうくらいしかなかったので、目をかけてもらうのに必死だったと思う。この先輩騎士こそがオブシディアンなのだが、そのおかげで亡き王妃様の実家であるラナンキュラス侯爵家とのコネクションが手に入ったのだ。

 そこからは連鎖するようにメテオライト王子を囲っていた派閥の者たちが集まってきた。この派閥は古きよきシスル王国の風習を良しとする集団である。
 シスル王国初代国王カーネリアンの名に倣い鉱石の名を付けた勇敢で逞しい騎士の育成、そして聖王国の守護者であることを目的とする。メテオライト王子は小柄なために剣や槍を取って戦うのは無理だと言われていたそうだが、それを埋めるように魔導の勉強に熱心だったので評判が良かった。少なくとも戦場を怖がり碌に武芸の稽古もしていないティモシー王子に比べれば、その評価は雲泥の差だ。

 周囲に密偵の気配がないか警戒しながら派閥の仲間と話を続け、陽が沈みかけてきたころ。リワープの杖が使えるという事で、メテオライト王子への手紙の配達をお願いしているミシェルが帰ってきた。

「ただいま戻りました」
「お疲れ様です」

 ミシェルにはこれまでに数度、秘密裏にメテオライト王子への手紙の配達を頼んでいた。快く引き受けてくれた彼女を労う意味も込めて、私はハーブティと茶菓子を差しだす。
 このハーブティーはシスル原産のハーブを複数ブレンドしたものだ。少し薬草臭さはあるのだが身体を温める効果があるからか、冷え性らしい彼女には気に入って貰えているようだ。

「オニキス様にお土産です。テオ直筆の手紙と仮面ですわね」
「仮面……ですか?」
「変装用ではなくて? いつ使うのかは存じませんけど」

 何かの暗号文かもしれないと、まずは仮面を見聞することにした私が抱いた印象は『仮面舞踏会など華やかな場で使われていそう』というものだ。
 シスル王国では武功を褒めたり戦地に向かうものたちへの労いもかねて、それなりに夜会が開かれている。しかし仮面舞踏会が開催されたなどという話は、今までに一度も聞いたことがないので需要はなさそうだ。
 ならばメテオライト王子はどのような意図を持ってして、この仮面をミシェルに託したのであろうか?
 疑問の答えは手紙に書かれているかと思い封を切るも、中に書かれていたのは短い文章ともいえないものであった。

「『アゲートくんの仮面』……アゲートとはいったい誰でしょうか? 我が軍にも派閥にも、そのような名の者は居ないはずですが」
「鉱石の名前ですからシスル騎士かと思ったのですけれど、違いましたのね。……もしかして変装時の偽名にでも使えという事かしら?」

 私たちは揃って首を傾げる。派閥の仲間も仮面の装飾などを観察し、なにか秘密の暗号を探しているようだが発見はないらしい。

「メテオライト様は、なにも仰られなかったのですか?」
「訪ねて行ったらお師匠様と二人で魔装具作りに没頭していて、碌に相手にされませんでしたの。この手紙と仮面をオニキス様に渡すようにとしか」

 だとしたら本当にただの変装用か。魔装具というと魔導士たちが身に着けている装飾品だ。防具でもあり魔力効率を高める効果があると聞いているので、戻ってくるために新しく作っているのか準備に忙しいのだろう。
 ゲームの設定資料集やスマホゲームの吟遊詩人《バード》としての立ち絵を見た限りだと、エスニックな雰囲気の腕輪や首飾りがたぶんそうなのだろう。しかし一国の王子という雰囲気ではない、カジュアルなデザインのものだった。

「ふむ……。我が軍はローレッタ攻略の手柄があるぶん、暫く時間が取れます。ミシェル嬢の依頼に関しては私が実行いたしましょう」
「なるほど、オニキス様が謎の騎士アゲートになりますのね。では私はどなたと行動すればよろしいかしら?」
「貴女のことはオブシディアン将軍に預けさせていただきます。私とは鳥を使ってやり取りをすることになるでしょうが、殆どのことは彼の判断に任せますので従ってください」
「解りました。オブシディアンさまの指揮下という事は、お父様も一緒ですわね。安心しました」

 今のローレッタ聖王国は王都をはじめとした大半の地域が帝国の支配下にある。その中でもリリエンソール公爵領と王都アヴァロンを陥落させたシスル王国軍の功績は大きい。
 だが私のしたことは聖王国の民に恨まれても仕方のないことだ。いずれ誹りを受けることがあれば喜んで受け入れよう。その為にも私はミシェルを利用しているだけの男である必要がある。あまり仲良くしているのを見られるのは好ましくない。この点に関してはオブシディアンにもすでに相談済みだ。対応に関しても彼の判断に任せてある。

「ええ、それで……」
「私はオブシディアン様たちと共に、オニキス様の不在を誤魔化せばよろしいのでしょう?」
「はい。よろしくお願いします」
「こちらこそ、フェイス様を頼みます」
「命に代えてもお守りいたしましょう」

 しかし誤魔化しが効くのは、せいぜい数ヶ月が限界だろう。リリエンソール家とオブシディアンが手を組んでいる分だけ、通常より少し長くなる程度とみていい。どのような手を使うかは現場の判断に任せることとなるが、任せてしまっても問題ない相手だ。

「ところで一筆お願いできますか? 身分を隠し接近するという時点で周囲から怪しまれてしまいそうでして」
「それもそうですわね。フェイス様宛にお手紙をしたためますので、少々お待ちになって下さいな」
「ではその間に旅支度を整えてまいります」

 変装は仮面があれば素顔が隠せるのでいいとして、問題は持ち物だ。一介の兵として行軍に混ざるには、いろいろと必要なのである。武器と傷薬などは支給されることもあるが、飛び込みで腕を売り込むなら自前が基本だ。食事は軍が確保して供給してくれるが、食器は自前で持ち歩く必要がある。
 それから旅人と名乗って合流するつもりであるので、その身分を疑われないような持ち物は必須条件だろう。ならば鍋も一つくらい持っていったほうが良いか。他にも何かと入り用になるかもしれないが、情勢的に手に入り辛いものは優先的に準備しておく。

 フェイス王女の護衛として合流するのが目当てだが、グレアム王子が健在なのであれば彼に忠節を示すのも忘れてはならないだろう。
 ならば騎士の誓いにおいて儀礼的に使うこととなる、未使用の銀の剣も必要になるだろう。なかなか値段の張る武器ではあるが、準備して布で包み荷物に入れる。

 支度が整いミシェルのもとに向かう。丁度彼女も手紙を書き終わったようで、それなりの厚さがある封筒を渡された。宛名と差出人に書かれた文字は、なかなかに個性的だ。

「随分とたくさん書かれたのですね?」
「これでも足りないくらいです」

 そのままミシェルはワープの杖を構えた。ワープの杖で転送できる距離は平均して、馬を走らせて三日ほどの距離までだ。魔力の高い彼女であればもう少し距離も伸びる。なので一先ずは海沿いの地域へと飛ぶ。
 その後はリワープの杖で追いかけてくるミシェルを待ちながら、距離を調整しつつアイリス島を目指した。現在どこに居るのか判らない相手を下手にローレッタ国内で追いかけるより、目的地であるアイリス王国、ないしは中継地でもあるアイリス島の北部ハイドランジア王国で待つほうが建設的であると判断してだ。

 数度の転送を繰り返し最後の転送となった。場所はローレッタ大陸の南西に位置するアイリス島――その北東にあるハイドランジア王国はコナハト港と森の中間地点辺りだ。目的の人物は港で情報収集をしながら探すことができるだろう。彼らが出発してからの時間を考慮すると、辿り着いているかギリギリくらいの時期だ。

 なるべく目立たないように港町で情報収集をしていると、知った者の名が出てきた。傭兵のベルトラムの名だ。この辺りは傭兵が集まる街が近いのもあり、同業者のあいだでは有名人なのでそれなりに目立つようだ。ミシェルの話によれば彼もフェイス王女が居る一団にいるので間違いないだろう。私は仮面で素顔を隠すと、彼らの向かった方角を目指し馬を走らせた。
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