ツイッターログ02


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【ある茶会にて】
 私の名はグレアム。このローレッタ聖王国の第一王子だ。まだ父上達のように公務は出来ないが、未来の側近候補や伴侶を選ぶために様々な人脈を繋いでいるところだ。
 しかし私の第一王子という立場のせいか、妃候補という肩書きが魅力的なのか、寄ってくる女性たちは辟易するような相手ばかりだ。今までに直接会って話をしたことのある令嬢達の中で、素養はともかく性格的に問題が無さそうな者はメレディスくらいだろう。しかし彼女にはつい先日、『私はフェイス様の騎士になるので、グレアム殿下のお后は無理です。他の方に頼んで下さい』と言われたばかりだ。無礼と言えれば楽なのだが、貴族との力関係からなかなかそうもいかない。五大侯爵家にそっぽを向かれる、あまつさえ独立などされては最悪の場合は聖王国の存亡にすら関わるのだ。
 しかしメレディスに断られたとなると、頼みの綱はモンタギューの娘であるミシェルくらいしか残っていない。しかしこちらはメレディスほど話をしたことが無いのだ。今までに何度か顔をあわせ挨拶を交わしたことはある。しかし本当にただの挨拶だけなのだ。こちらはこちらで魔導の勉強が楽しいらしく、私にまるで興味を示してくれない。ここまで女性に相手にされないのは生まれて初めてだったが、あれくらい淡泊なほうが良いのかもしれない。リリエンソール家は五大侯爵家の中でも聖王家と一番繋がりが深い。ならばと思い立ち、まずは彼女の気を引こうと贈り物作戦を思い立った。
 しかし贈り物をするのに相手の趣味に合わないのは申し訳ないし、私に見る目が無いみたいで嫌なのだ。なので丁度庭園で催されている妹主催の茶会を、少し行儀は悪いが目立たないように覗くことにしたのだ。
 美しい庭園に用意された茶席には、妹とそう年の離れていない十歳前後ほどの令嬢たちが和やかに談笑しているようだ。流石にこの年齢から貴婦人たちのような嫌味や妬みを添えるような者が居ないことに安堵しつつ、目的のモンタギューの娘ミシェルを観察する。
 今日のミシェルは黄緑色のワンピースドレスに白いボレロといった装いだ。髪を結っているリボンも上着に併せて白。以前会ったときも白や緑系の色を身に着けていたことから好んでいる色かと思いたいところだが、彼女の家リリエンソール公爵家の色もこの二つなので悩ましいところだ。
 では装飾品はどうだろうかと、手に持っていたオペラグラスを覗き込む。首飾りが一つ、アンティークゴールドで鍵のような形をしている。まて、これは先日読んだアイテム図鑑に載っていたカウスリップではないか?私の記憶が確かならレベルアップ時に成長率へプラス補正を付けてくれる稀少なアイテムだったはずだ。レベルやステータスなどは戦場と無縁であるはずの貴族の娘が気にするものではない。嫌な予感がしてきた。
「グレアム殿下、ミシェルの好みは判りましたか?」
「彼女も将来は騎士を目指しているのか?」
「大陸最強の魔導士を目指しているところですね。あの首飾りはマーリンに貰ったそうですよ」
 背後から現れたモンタギューが名を挙げたのは、最近リリエンソール公爵家に住み込みで家庭教師をしている魔導士のことだ。どこで知り合ったのかは知らないが、砂漠の向こうから来たとの噂である。
 しかし、ここまで嗜好が分かりにくい令嬢は初めてだ。彼女の今の年齢くらいであれば、ドレスだ宝石だと興味を持ち始めても可笑しくないはずなのだ。父親であるモンタギューに聞いても「魔導の研究用に機材やアイテムを欲しいとは言われますね。ドレスなどに関しては衣装係に殆ど丸投げなので……」である。
「彼女の衣装係と言えば、有名なデザイナーでもあったな」
「はい。うちの娘の可愛らしさに惹かれて専属契約に」
 どうしたものかと頭を抱えそうになったところで、私はバランスを崩し転びそうになる。咄嗟にモンタギューが手を貸してくれたことで倒れるという失態はせず済んだが、その代わり大きな物音を立ててしまった。
 すると私の存在に気がついたのだろう、何人かの令嬢たちから熱い視線を感じた。そして、ここに顔を出したのは失敗だったと後悔する。
 見る見るうちに彼女たちの興味の対象は妹から私へと移ってしまう。妹の茶会を台無しにしてしまい、まずいなとと思いきや、二人だけ熱心に妹に話しかけているものが居る。一人はミシェルで、もう一人がメレディスだ。心なしか二人からたまに飛んでくる視線が痛いし恐い。
 このままというわけにも行かず、簡単な挨拶と、これからも妹と仲良くしてやってくれと話した後は、有りもしない用事を口実に逃げるようにその場を去った。

 その後、結局ミシェルからは『私にはいつか黒馬に乗った聖騎士様が婿に来て下さいますので、グレアム殿下の婚約者候補を辞退させて頂きます。他の方に当たってくださいまし』と断られたあげくに『今度フェイス様のお茶会を邪魔したら、ぶっ飛ばしますわよ?』とも言われたのだ。

 当時はその『黒馬の聖騎士様』が誰なのか判らなかったが。あれから十年近くの歳月が経ち、それは突然に私の前に現れた。整えられた藍色の髪に、黒で統一された戦装束――仮面で素顔と真の名を隠す腕の立つ聖騎士アゲート。ミシェルの知人を名乗るのであれば間違いないだろう。身なりや立ち居振る舞いからして、どこかに仕官している騎士だ。
 しかし一人でも多く、それも腕の立つ味方が欲しい今は誓いを違えぬのであれば詮索するつもりは無い。
 だがその騎士は最近、妹と親しくしている。かく言う私も彼の話に夢中だ。自分がいかに世間知らずだったかを思い知らされるし、何より彼という騎士の人となりが僅かでもすけて見えるのが面白いのだ。
「如何なさいましたか?」
「私としてはお前の素性が判れば、すぐにでも側近にしたいくらいなのだがな。既にこれと決めた主君が居るのだろう?」
「申し訳ありません。しかし誓いは違えません」
 空になったカップに新しい茶が注がれる。普段から慣れ親しんだ紅茶では無くハーブティーだが、慣れない旅や戦でささくれ立った気持ちを落ち着けるにはちょうど良い。心を穏やかにしてくれる香りを楽しみながら、私は未だ遠い故郷に思いを馳せた。
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ツイッターログ01

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【悪夢?】
 何故かいま、俺はミシェルと一緒のベッドに寝ている。腕の中ですやすやと眠る彼女の寝顔は普段と比べるとあどけなさがあり、なんというか凄くいい。
 そして俺の手がどこにあるのかと思うと、都合のいいことに胸の下あたりだ。ちょっと動かせばラッキー何とかで済ませてもらえる範囲! ちょっとだけだからと思いながらさり気なく腕を動かすも、ここで異常事態発生。ミシェルの胸が無い……だと? そんな馬鹿な。
「何をしているのかしら?」
「あの、えっとその……」
 怖い。なぜこんな状況になったのかもわからないけどホント怖い。氷の微笑もさることながら、彼女の豊満な胸が消えてなくなってしまったという事も怖い。
「胸を触ってしまい、大変申し訳ありませんでした」
 思わず土下座で謝ろうとするも、ミシェルの予想以上に強い腕力で腕をつかまれ逃げることすら出来ない。そのまま引き寄せられお互いの顔がくっつきそうなほど密着すると、耳元で囁かれる。
「触ったのか? この胸を?」
 いやいやまさか。リコレで散々再生して聞きまくった氷の貴公子の声《イケボ》だぞこれ。何これなんで?何がどうなって野郎二人で同じベッド!? いや、そんなことよりミシェルが男になってしまった! いや違う、原作通り男だった!
「俺の秘密を知ったからには生かしておくわけにはいかないな」
 ワイシャツ一枚だけを身に着けた氷の貴公子はマウントポジションから俺の胸目掛けて鋭いナイフを突き立ててきた。
「うわあぁぁぁっ!?」
 野営の天幕のなか飛び起きる。ベルトラムとゲールノートが俺の顔を覗き込んでいた。
「どうしたんだ大きな声出して?」
「随分とうなされていたぞ?」
 夢か……夢でよかった!
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